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糖尿病

どのような病気か

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が通常よりも高い状態を指します。通常、食事から摂取した糖分はインスリンというホルモンの働きによって体内の細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。しかし、糖尿病患者では、この血糖の調節がうまくいかなくなります。これは、体内でのインスリンの分泌が不足するか、あるいは体内でのインスリンの効果が低下することによって起こります。

 

糖尿病の定義

「糖尿病の疑い(糖尿病型)」の判断は、一般的に以下の基準に基づいて行われます。

1.空腹時血糖値(Fasting Plasma Glucose, FPG)

空腹時の血糖値が126 mg/dL以上である場合

2.経口ブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test, OGTT)

経口ブドウ糖負荷試験において、2時間後の血糖値が200 mg/dL (11.1 mmol/L) 以上である場合。

3.HbA1c(グリコヘモグロビン)

HbA1cが5%以上である場合。HbA1cは、直近2〜3ヶ月間の平均血糖値を示す指標として利用されます。

 

「糖尿病型」が同日または別の日に2つ確認されると糖尿病の診断となります。

 

糖尿病の臨床診断のフローチャート(糖尿病診療ガイドライン2019より抜粋)

 

糖尿病の原因

糖尿病は、主に以下のような要因によって引き起こされます。

1.インスリンの不足または抵抗性

タイプ1糖尿病

免疫系が体内のインスリン産生を攻撃し、インスリンの不足を引き起こす自己免疫疾患です。

タイプ2糖尿病

体細胞がインスリンに対する抵抗性を持ち、インスリンの効果が十分に得られなくなる状態です。

2.遺伝的要因

糖尿病は、遺伝的な素因によってリスクが増加する場合があります。家族に糖尿病を持つ人がいると、自身の発症リスクが高まる可能性があります。

3.生活習慣

不健康な食事

高カロリー・高脂肪・高糖分の食事や飲食物の過剰摂取は、糖尿病のリスクを増加させる要因となります。

運動不足

運動不足や肥満は、インスリンの効果を低下させ、糖尿病の発症リスクを高めます。

4.その他の要因

ストレス

長期間にわたるストレスや精神的な負荷は、血糖値の上昇を引き起こす可能性があります。

特定の医薬品

特定の薬物や化学物質の使用は、糖尿病の発症リスクを増加させることがあります。

これらの要因が組み合わさることで、糖尿病が発症する可能性が高まります。糖尿病のリスクを減らすためには、健康的な生活習慣を維持し、定期的な健康診断を受けることが重要です。

 

糖尿病の症状

糖尿病の症状は、個人によって異なる場合がありますが、一般的な症状には以下のようなものがあります。

1.多尿・多飲・多食

多尿(多尿症)

尿意を感じてトイレに頻繁に行く必要があります。特に夜間に頻尿が起こることがあります。

多飲(多飲症)

常にのどが渇いており、大量の水や他の飲み物を摂取したくなることがあります。

多食(多食症)

食欲が増し、通常以上の食事を摂取したくなることがあります。

2.体重変化

体重の急激な増加または減少が見られることがあります。特にタイプ1糖尿病の場合、体重の減少がよく見られます。

3.疲労感

疲れや倦怠感が常に感じられます。日常の活動や運動に対する耐性が低下します。

4.皮膚の変化

かゆみや皮膚の乾燥、または慢性的な皮膚感染症(例:カンジダ感染症)が発生することがあります。

5.その他の症状

頭痛やめまい、視力の変化、手足のしびれや痺れ、傷口の治りが遅いなどの症状が現れることがあります。

 

糖尿病の合併症

糖尿病が適切に管理されないと、さまざまな合併症が発生するリスクが高まります。主な合併症には以下のようなものがあります。

1.循環器系合併症

心血管疾患

高血糖や高血圧が持続すると、心臓や血管に損傷を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが増加します。

動脈硬化

血糖のコントロールが悪いと、動脈硬化が進行し、血管が狭窄したり閉塞したりするリスクが高まります。

2.神経系合併症

末梢神経障害

高血糖が神経にダメージを与え、手足のしびれや痛み、知覚障害などを引き起こす末梢神経障害が発生します。

自律神経障害

自律神経の機能障害が起こり、消化器症状、性機能障害、循環器症状などが現れる場合があります。

3.腎臓合併症

糖尿病性腎症

高血糖が腎臓に損傷を与え、慢性腎臓病や最終的には透析治療が必要となる糖尿病性腎症が進行します。

4.眼疾患

糖尿網膜症

高血糖が網膜血管に損傷を与え、失明の原因となる糖尿網膜症が進行するリスクが高まります。

 

糖尿病の治療

糖尿病の治療は、血糖値を管理し、合併症のリスクを軽減することを目的としています。以下は、糖尿病の治療に用いられる主な方法です。

1.生活習慣の改善

食事療法

健康的な食事療法を行い、糖質や脂質の摂取量を調整します。食事の内容や摂取タイミングを適切に管理することが重要です。

運動

適度な運動を行うことで血糖値をコントロールし、体重を管理します。有酸素運動や筋力トレーニングなどが推奨されます。

<目標体重(kg)の目安>

65 歳未満:[身長(m)]2×22

65 歳から 74 歳:[身長(m)]2×22~25

75 歳以上:[身長(m)]2×22~25

 

<身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/kg)>

①軽い労作(大部分が座位の静的活動):25~30

②普通の労作(座位中心だが通勤・家事,軽い運動を含む):30~35

③重い労作(力仕事,活発な運動習慣がある):35~

 

<総エネルギー摂取量の目安>

総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(kg)×エネルギー係数(kcal/kg)

 

当院では管理栄養士が常駐しております。患者さんが食事内容を一緒にふり返り、問題点をみつけ、改善していけるように、食事療法プランを提案いたします。

また、当院ではフレイルやサルコペニアの進行予防、水分量、筋肉量、脂肪量など体組成評価を必要とする疾患の管理目的にInbody検査を導入しており、生活習慣病の管理に役立てています。

 

2.経口血糖降下薬

インスリンの分泌促進や体内のインスリンの効果を向上させる薬物が処方されます。

ビグアナイド系薬剤

薬剤名:メトホルミン(Metformin)

特徴:インスリン抵抗性を改善し、肝臓からのグルコースの産生を抑制します。また、末梢組織でのインスリン感受性を高めます。低血糖のリスクが低く、体重増加のリスクも低いため、糖尿病治療の第一選択薬とされています。

スルホニルウレア系薬剤

薬剤名:グリペンチド(Glinide)、グリメピリド(Glimepiride)など

特徴:膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げます。食後の血糖値を効果的にコントロールする効果がありますが、低血糖のリスクがあるため、適切な用量管理が必要です。

チアゾリジンジオン系薬剤

薬剤名: ピオグリタゾン(Pioglitazone)

特徴:体内の組織でのインスリン感受性を改善し、肝臓からのグルコースの産生を抑制します。また、脂質異常症の改善効果もありますが、体重増加や心血管系の副作用のリスクがあるため、注意が必要です。

DPP-4阻害薬

薬剤名:シタグリプチン(Sitagliptin)、リナグリプチン(Linagliptin)など

特徴:インクレチン作動薬と呼ばれ、血糖値を下げる働きがあります。食後血糖値の上昇を抑制し、低血糖のリスクが低いのが特徴です。また、体重増加のリスクも低いです。

SGLT2阻害剤

薬剤名:カナグリフロジン(Canagliflozin)、ダパグリフロジン(Dapagliflozin)、エンパグリフロジン(Empagliflozin)など

特徴:腎臓のSGLT2(ナトリウム依存性グルコース共輸送体2)を阻害することにより、尿中のグルコース排泄を増加させ、血糖値を下げます。血圧や体重の低下効果があります。尿中のグルコース排泄に伴い、体重減少や循環血液量の減少による血圧降下が見られることがあります。血管イベントのリスク軽減効果が示されており、心血管系の保護効果が期待されています。尿路感染症や外陰部真菌症などの副作用のリスクが増加することが報告されています。また、脱水や低血糖症のリスクも注意が必要です。

 

3.インスリン療法

インスリンを注射して血糖値を調整する治療法です。糖尿病が進行した場合や他の治療法が効果的でない場合に使用されます。インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンであり、血中のグルコースを取り込んで細胞内に取り込むことで血糖値を下げます。

主な種類

速効型インスリン

薬剤名:リスプロ(リスプロインスリン)、アスパルタム(アスパルタムインスリン)など

特徴:食事の直前または食後に投与し、血糖値の急激な上昇を抑えます。効果が速く、血糖値を急速に下げることができます。

中間型インスリン

薬剤:NPH(中間型人間インスリン)

特徴:効果が速く持続時間が中程度のインスリンであり、主に食事と同じタイミングで投与されます。食後の高血糖を抑える効果があります。

長時間作用型インスリン

薬剤名:グラルギン(グラルギンインスリン)、デテミア(デテミアインスリン)など

特徴:一日中一定にインスリンが効果を発揮するため、基礎的な血糖値コントロールに使用されます。食事とは関係なく、一日中持続的に作用します。

 

4.定期的なモニタリングとフォローアップ

血糖値のモニタリング

定期的に血糖値を測定し、治療の効果を確認します。自己モニタリングや定期的な医師の診察が重要です。

合併症のスクリーニング

必要に応じて、心血管疾患、腎臓病、網膜症などの合併症のスクリーニングを行います。

 

糖尿病のコントロール目標

糖尿病のコントロール目標は、患者の健康状態や合併症のリスクを踏まえて設定されます。個々の患者に最適な目標を設定し、達成することが重要です。

 

(糖尿病診療ガイドライン2019から抜粋)

HbA1c目標値の達成は、糖尿病合併症のリスクを軽減し、健康な生活を維持するために重要です。目標値を達成することで、心血管疾患、神経障害、網膜症などの合併症の発症リスクを低減することが期待されます。

 

当院でどのように外来通院して頂くか

・併存症や喫煙などを基に、血圧・体重減量・禁煙など管理目標を設定します。

・管理栄養士による食事内容の確認、栄養指導(塩分など)を行います。 

・定期的に行う検査

血液検査・尿検査

併存症の有無、お薬の副作用を確認する目的で1~2カ月に1度、3~6カ月に1度尿検査を行います。健康診断・人間ドックの結果も適宜ご持参頂きます。

心電図・胸部X線

1年に1度定期検査として行うことをお勧めします。胸部エックス線検査は、喫煙者には年2回実施することもあります。

頸動脈の超音波

動脈硬化性病変が進行していないか、1~2年に一度定期検査を行います。

眼科受診

糖尿病性網膜症の有無に関して、眼科に定期通院を推奨します。

 

・安定すれば2カ月間隔での通院に移行します。

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