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遷延性咳嗽・咳喘息

呼吸器内科医として外来診療を行っていると、診察する機会として多いのが「咳が続く」ということと「健診で指摘された胸部異常陰影」になるかと思います。
先行した感冒・気管支炎の名残で、長く続く咳(感染後遷延性咳嗽)はよくみられますが、その他にも鑑別すべき疾患はたくさんあります。例えば、後鼻漏(上気道咳嗽症候群)、副鼻腔気管支症候群(気管支拡張症、副鼻腔炎)、間質性肺炎、肺炎(マイコプラズマやクラミジア気管支炎・肺炎)、肺結核・非結核性抗酸菌症、肺がんなどあらゆる呼吸器疾患が挙げられます。また、心不全や心室性期外収縮などの循環器(心臓)疾患、胃食道逆流症などの消化器疾患、耳鼻咽喉科疾患、睡眠時無呼吸症候群、心因性咳嗽、など他科疾患、さらには服用している薬が原因疾患となることがあります。

どのような症状か、年齢や頻度を鑑みながら診断・治療にあたる必要があります。その中でも咳喘息は、近年特に増えている印象があります。

どのような病気か

咳喘息は、原因としては喘息と同様に気道の慢性炎症によって生じています。咳喘息は一般的に喘息の初期症状と考えられており、喘鳴(ヒューヒューいう音)が生じないのが特徴です。季節の変わり目や風邪をひいた後などに咳だけが残存して気がつくことが多い病気です。会話、冷気、タバコの煙、香水、エアコンといった刺激で咳が誘発されます。咳自体は夜間、布団に入った直後、明け方に多く出現し、咳により目が醒めることもあります。
咳喘息が、臨床的に重要な点は、喘息へ移行してしまうことです。成人の場合、咳喘息患者の約30%が喘息に移行するとする報告もみられます。吸入ステロイド薬がその移行率を低下させるとされています。

どのように診断を行うか

咳喘息の診断基準

  1. 喘鳴を伴わない咳嗽が8週間(3週間)以上持続
    聴診上も喘鳴(ヒューヒューいう音)を認めない
  2. 気管支拡張剤が有効

参考所見

 1) 末梢血・喀痰好酸球増多、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)高値を認めることがある
 2) 気道過敏性が亢進している
 3) 咳症状にはしばしば季節性や日差があり、夜間~早朝優位のことが多い

咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019

2週間以上続く咳の場合は、まずレントゲンを撮り原因を調べることが重要です。特に、息切れなどの呼吸困難が強い場合、症状が急に悪くなっている場合、基礎疾患を有する場合には、早めにレントゲンなどの精査を考えるべきです。
咳喘息の診断のために、問診・聴診の後、レントゲン検査や肺機能検査を行います。(呼気中一酸化窒素濃度測定(FeNO)で気道の炎症状態を把握、モストグラフで気道抵抗を測定し、気道閉塞の状態を把握できるよう、今後両検査機器導入を検討中です)
また、血液検査で、アレルギー検査の実施も考慮します。

どのように治療を行うか

気管支拡張薬により咳が止まるのが特徴的所見で、通常の咳止めは効果がありません。吸入薬(吸入ステロイド+気管支拡張剤)を導入します。1~2ヶ月程度の治療ではなく、症状が無くなっても数ヶ月の治療継続が必要です
予防として、マスク着用・手洗い・手指消毒による風邪の予防、適度な加湿をお勧めします。また、掃除機によりダニ・ハウスダスト・ペットの毛などの誘因をできる限り除去することが望ましいです。

当クリニックでどのように外来通院して頂くか

吸入薬を開始し、2~4週間後に再受診を予定します。その後は、状態をみながら数か月の治療継続を考えます。

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