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肺結核

どのような病気か

 結核は結核菌Mycobacterium tuberculosisの感染によって引き起こされる感染症です。結核菌は患者の咳と一緒に喀出される飛沫の中に存在し、その後菌のまわりの水分が蒸発し乾燥した状態(飛沫核)となって、空気中を漂います。この漂っている菌を吸入し、菌が肺胞領域まで到達すると、そこで増殖し「感染」が成立します。ただし、「感染」と「発病」は異なります。「感染」したとして、全ての人が「発病」するというわけではありません。「感染者」のうち、「発病」する人は生涯で10~23%とされ、特に感染後5か月~18か月頃に発病する人が多いとされています。一番病巣ができやすいのは肺(肺結核)ですが、肺以外にもリンパ節や骨など体中に病巣をつくることがあります(肺外結核)。結核の「発病」リスクが高い人として、糖尿病、免疫抑制剤・副腎皮質ステロイド・生物学的製剤の使用、悪性腫瘍、胃切除後、低栄養、血液透析中の腎不全、HIV感染者などが挙げられます。

肺結核の症状は様々ですが、2週間以上の咳や痰、微熱、倦怠感、寝汗、体重減少などがあります。

どのように診断を行うか

必要な検査

結核症を疑ったときに行うべきは、まずは胸部画像(レントゲンとCT)の評価と喀痰検査です。

胸部レントゲン・CT

まず、胸部レントゲン検査を行い、疑わしい影がある場合はCTでの精密検査を考えます。

 

胸部レントゲン:右肺の上側に陰影を認めます

胸部CT:右S6といわれる場所に空洞、その周囲に散布する陰影を認めます

 肺結核の画像は、空洞やtree-in-bud appearanceというパラパラと気管支周囲に広がる陰影が典型的です。ただし、実際の臨床では典型的ではない場合もたくさんあり、診断に苦慮する場合もあります。

喀痰検査

喀痰中に結核菌がいるかどうか(排菌しているか)調べます。一般細菌の培養とは別に、抗酸菌の塗抹検査・培養検査、そして必要に応じて結核菌PCR検査も実施します。どうしても喀痰が喀出できない場合、喀痰で結核菌の証明が得られない場合には、胃液を採取したり、生理食塩水のネブライザー吸入により喀痰の喀出を促したりします。それでも診断できない場合は、気管支鏡検査を考慮します。

血液検査

結核感染の有無を調べる血液検査として、インターフェロンγ遊離試験:IGRA(T-spot)があります。従来から行われてきたツベルクリン反応検査とは異なり、幼少期に接種するBCG接種の影響を受けず、正確に結核感染の有無を調べる方法です。ただし、T-spotが陽性の場合に、過去の感染によるものか、最近の感染なのか区別はできません。

どのように治療を行うか

留意すべきこと

・結核を診断した医師は直ちに保健所に届け出る義務があります。保健所によって感染性があると判断した場合は入院が勧告されます。

・結核は適切な治療を受ければ治る病気です。

・薬を飲み始めれば人にうつす恐れは少なくなりますが、最後まで治療することが大切です。

・薬を正確に続けてのむことが1番のポイントです。医師の指示があるまで必ず飲み続けなければなりません。

・薬を飲み始めると咳や微熱などの自覚症状は治まりますが、これは菌の活動が弱まっただけで、治ったわけではありません。飲み忘れや自己判断での中断をした場合、耐性菌ができ薬が効かなくなります。

治療の実際

・抗結核剤による治療を初めて受ける場合、通常は強力な抗菌作用をもつイソニアジド、リファンピシンにピラジナミド、さらにエタンブトールまたは注射薬のストレプトマイシンのいずれかを加えた4種類の薬から開始します。

・80歳以上の高齢者や重症の肝機能障害のある方では、ピラジナミドを除いた3種類の薬で治療を行うこともあります。また、菌の薬剤感受性試験(薬の効きやすさを調べる検査)結果や元々の疾患によって、違う薬を使うこともあります。内服は6か月~1年行います。

・下記に主な抗結核薬とその副作用を示します。

表 主な抗結核薬

薬品名(一般名)   主な副作用(主な症状)

イスコチン

(イソニアジド)

内服

注射

肝障害(倦怠感),過敏症(発熱・発疹),

消化器症状(食欲不振,悪心,嘔吐)

末梢神経障害(手足のしびれ感),

視神経炎(視力が落ちた・物がかすんで見える)

リファジン

(リファンピシン)

内服

肝障害(倦怠感),過敏症(発熱・発疹),

消化器症状(食欲不振,悪心,嘔吐)

白血球減少・血小板減少

エブトール

(エタンブトール)

内服

肝障害(倦怠感),過敏症(発熱・発疹),

消化器症状(食欲不振,悪心,嘔吐)

視力障害(物がかすんだり色調が変わって見える)

ピラマイド

(ピラジナミド)

内服

肝障害(倦怠感),過敏症(発熱・発疹),

消化器症状(食欲不振,悪心,嘔吐)

ストレプトマイシン

カナマイシン

点滴

肝障害(倦怠感),過敏症(発熱・発疹),

聴力障害(音が聞こえにくい,耳鳴り)

平衡感覚の異常(めまい,ふらつき)

腎障害(尿がでにくい,体がむくむ)

クラビット

(レボフロキサシン)

内服

点滴

消化器症状(胃腸症状)

中枢神経症状

治療に際しての注意事項

・治療終了まで症状、特に咳の状態・体温・食欲・食事摂取量の変化・かゆみ・皮疹などの出現・変化に注意しましょう。

・尿や便が赤くなることがありますが薬(リファンピシン)の一部が排泄される為で、薬の副作用ではなく心配はいりません。

・定期的な血液検査が必要であり、その他に眼科受診、聴力検査を勧めることがあります。

・副作用が強い場合は、薬の一時中止・変更を行う必要があります。

公費負担申請

・結核医療費には公費負担制度があり、症状と所得に応じて入院・外来医療費の補助が受けられます。ただし結核以外の医療費及び結核診断に要した費用は公費負担の対象外です。

以下2点が申請に必要な書類です。

・結核医療費公費負担申請書(申請者は当該患者又はその保護者となります)

・3ヶ月以内に撮影したX線・CTフィルム(CD-ROM)

申請は、居住区の保健所に行います。公費負担の承認期間開始日は保健所が受理した日または郵送のときは消印日となりますのでご注意ください。承認期間は6ヶ月間以内となります。6ヶ月間を超えて結核治療を継続する場合は再度の申請が必要になります。

当クリニックでどのように外来通院して頂くか

排菌している場合は隔離入院の上での加療が必要です。保健所と相談しながら入院先を選定します。排菌していない場合は、外来加療も検討します。

治療が順調に終了しても1~2%の再発がみられるので、治療終了後2年間は経過観察を行います。

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